経済

価格転嫁率、人件費はわずか32%——それでも値上げすらできない医療・介護の立ち位置

💡 看護への影響ポイント

帝国データバンクの調査で企業の価格転嫁率が39.9%に低下し、なかでも人件費の転嫁率が32.0%と特に低い水準にとどまっていることが看護に与える影響は、一般企業でも賃上げ原資の確保に苦しむ中、そもそも自由な値上げという選択肢自体を持たない診療報酬・介護報酬という公定価格に依存する医療・介護分野は、さらに厳しい構造的立場に置かれているという点です。

ニュースの要約

帝国データバンクが全国2万2,350社を対象に実施した調査で、7月時点の価格転嫁率は39.9%となり再び4割を下回った。項目別では人件費の転嫁率が32.0%と、物流費(34.5%)・エネルギーコスト(29.6%)と並んで特に低い水準にとどまっている。

出典: 株式会社帝国データバンク(PR TIMES)(2026-08-28の報道)元記事を見る ↗

現場に影響するルート

  1. Step 1帝国データバンクの調査で、7月時点の企業の価格転嫁率は39.9%となり再び4割を下回った
  2. Step 2項目別では人件費の転嫁率が32.0%と特に低く、原材料費(47.3%)に比べて賃上げ分を価格に反映しにくい実態が明らかになった
  3. Step 3人件費は一時的な負担ではなく賃上げ・社会保険料・教育費等が継続的に発生するコストであり、価格に反映できなければ賃上げの原資が確保できず人材の採用・定着に影響しかねないと指摘されている
  4. Final Step一般企業でも人件費の価格転嫁がこれだけ難しい中、診療報酬・介護報酬という公定価格で収入が決まる医療・介護分野は、そもそも自由に値上げするという選択肢自体を持たない、さらに一段と厳しい構造的立場に置かれている

『値上げすればいいじゃないか』——そう簡単には言えない業界があります。

帝国データバンクが全国2万2,350社を対象に実施した調査で、7月時点の企業の価格転嫁率は39.9%となり、再び4割を下回りました。項目別に見ると、原材料費の転嫁率は47.3%と比較的高い一方、人件費の転嫁率は32.0%にとどまっています。人件費は一時的な負担ではなく、賃上げや社会保険料、教育費などが継続的に発生するコストです。それを価格に反映できなければ、賃上げの原資が確保できず、人材の採用・定着やサービス品質の維持にも影響が及びかねないと指摘されています。

一般企業でさえ、人件費の価格転嫁がこれだけ難しいのが実情です。ですが、医療・介護分野の立場はさらに厳しいと言わざるを得ません。診療報酬・介護報酬という公定価格で収入があらかじめ決まっている以上、他業種のように『値上げして人件費を賄う』という選択肢そのものが存在しないからです。今回の調査では、価格改定までの期間が「短くなった」とする企業が26.3%と「長くなった」を大きく上回った一方、転嫁率自体はむしろ低下しており、早めに動いても十分な転嫁には結びついていない実態も浮かびました。

人件費の上昇分は、報酬改定のタイミングでしか反映されません。処遇改善加算のような制度を最大限活用できているかどうかが、公定価格という制約の中でできる数少ない対応策のひとつになりそうです。

よくある疑問

Q.この影響を最初に受けるのは誰?

A.病院・介護施設の経営層・事務担当者と、公定価格の枠内で賃上げの恩恵を受けにくい看護職員・介護職員がまず関わってきます。

Q.現場で今すぐできることは?

A.今すぐ何かを変える必要はありませんが、報酬改定のタイミングで処遇改善加算等の活用状況を確認しておくと、公定価格の制約下でも取れる対応の選択肢が見えてきます。